講演会概要
最初に、性は多様だということを認識する必要があると指摘された。性の多様性とは、生物学上の性(男、女が前提)が基本だが、そのほかに、性自認(心の性)、身体上は男(女)だが、自分のことを女(男)と認識している人も存在する。また、性的指向(好きになる性)が主にどの方向かというものである。性的指向をいう場合に、嗜好と漢字を使わないことが重要である。つまり、自分の趣味・嗜好で選択しているのではないことだと強調された。
LGBTQとは、英語の頭文字であり、その意味・内容を解説された。これと関連するSOGI(Sexua Orientation、Geder Identity)も頭文字で、最近は人権等への配慮から国際社会においては、これが使用されることが多いと解説。LGBTQの国内の存在比率は、2018年調査で8.9%、左利きの人やAB型の人が10%であることから比較すると、少ないとは言えない。しかし、LGBTQの人と出会った話をしたとする人が少ないのは、「いない」のではなく、「見えて」いないのである。
性的指向・性自認に関する言動もセクシャルハラスメントに該当するので、そのことを頭に入れて対応することが必要である。また、職場において、性的指向(好きになる対象)に関し、具体的に打ち明けられた(アウティング)ケースでの問題では、パワハラ防止法の指針を参考に対処すること、本人がカミングアウトした時の対処などについて、日常での職場内における問題となる言動などを紹介・解説いただいた。
次に、職場の労働条件に関する基本的な考え方は、LGBTQであることと基本的に無関係である理由での人事措置は、当然、適法性が認められるが、LGBTQが間接的に影響していることがトラブルの原因や発端となっているケースは、難しい問題となると思われる。今後は、このケースが多くなってくることが予想される。これの考え方は、当該事象に対し、措置を行う必要性・相当性の有無・程度が当該措置の有効性・適法性に大きく影響する。個別の事案ごとに、企業側・LGBTQ側の双方に、一定の理解・配慮と相互調整が必要となる。そして、双方の対立点に対し、解決のための協議をどれだけ真剣に行ったかが、大事となると指摘された。
具体的な問題として、採用面接の場でLGBTQを確認できるかであるが、企業の姿勢によって変わる。つまり、LGBTQに理解を示している企業では、一層配慮されるという形では許容されるが、理解を示していない企業については、そのことで不採用になる場合もあり、違法とされる恐れがあり、確認はしない方が良いだろう。
福利厚生の問題では。トランスジェンダーの男性が化粧したり、女性の服装をして勤務した裁判例やトイレ、更衣室の使用に関する裁判例も紹介して、このようなケースの対応策を解説いただいた。
・アウティングー本人の同意なしに本人がオープンにしていない性的指向・性自認などを正当な理由なく第3者に開示すること、又は開示を強制すること。
・カミングアウトー本人が自分の性的指向・性自認を他人に打ち明け、公表すること。