ひょうご労働図書館では、ビジネス・労働関係の書籍・資料や雑誌等を多数所蔵しています。どなたでもお気軽にご利用ください。

過去の講演会

令和元年度 第4回「労働統計から見える今後の雇用労働問題」(2019年12月9日)


<講演>

講演『労働統計から見える今後の雇用労働問題』
講師 神戸大学大学院経済学研究科 准教授 勇上 和史氏

日程:令和元年12月9日(月)15:00~16:30
場所:兵庫県中央労働センター

開催趣旨:

労働統計は労働施策を推進していく上において実態を把握するための基礎資料で統計内容は非常に多岐にわたっている。今回は賃金、労働時間、労働力調査など代表的な労働統計を取り上げ、労働統計の見方のポイントについての解説と併せて、労働統計から見えてくる日本の労働市場の特徴や変化についての講演。

講演要約:

1.労働統計の定義はILOでの規定で決められている。主な労働統計は国勢調査、労働力調査、就業構造基本調査、毎月勤労統計、雇用動向調査、職業安定業務統計、学校基本調査、社会生活基本調査、賃金構造基本統計調査、就労条件総合調査、家計調査、全国消費実態調査、雇用管理調査、雇用均等調査、能力開発調査、労働組合基本調査、労使関係総合調査、労働争議統計などである。それぞれの統計は調査の頻度、調査対象、標本(母集団)数などは当然決められている。

2.基本的に世帯調査(個人)と事業所調査があるが、統計の見方・使い方で注意してもらいたいことは、①調査対象全体(母集団)の違いを意識すること。②調査事項の違いを意識すること ③回答者の違いを意識することである。

3.これらの統計を用いた研究者たちの研究例は数多く発表されている。
そのいくつかを紹介すると、①日本の長期雇用慣行は現在変わってきているのかという研究、男性では一貫して、女性では70年代から低下傾向を示している。②就職氷河期に就職した人の賃金は、好況時の就職した人より獲得賃金は持続的に低いという結果がある。③若年無業者は親の収入が高い人ほど無業者になっている。④女性の離職の実態解明⑤正社員・非正社員の格差は社内呼称により収入差が大きい。⑤労働時間のギャップ―個人就業時間と事業所所定時間の違いの要因分析など。

4.過去から現在までに大きく変化した項目は、①長期雇用の衰退の実態、②年齢別の賃金の上昇率の低下、③新技術導入と仕事の変化、逆に、変化していない項目は、①不況の若年者へのしわ寄せ状況、②女性の出産・育児期の退職・就業継続傾向、③呼称による正規・非正規間の格差、④フルタイム労働者の長時間労働の実態などである。 

5.今後の人事労働の課題を挙げてみると、①組織の中核メンバーとそれ以外との格差問題―二分法によらない雇用管理と均衡処遇の実現、②企業の中核メンバーの問題―仕事や評価の見直しによる効率化を推進することと多様な労働者の能力とニーズを生かす働き方改革の実現 ③仕事内容の変化への対応―会社主導のキャリア形成から労働者自身が就業能力を形成することなどが挙げられる。

※ 研究会の資料をご希望の場合は、お問い合わせフォームより事務局までお問い合わせください。

TOPへ